建設現場の廃棄物を運ぶには許可が必要?元請・下請別に解説

「下請で入った現場の廃材を、自社のトラックで持ち帰ってもよいですか?」。同じ会社でも、元請の現場か下請の現場かで確認することが変わります。

建設工事で出た廃棄物の排出事業者は、原則として、発注者から直接工事を請け負った元請業者です。実際に作業した会社や、トラックの持ち主だけで決まるわけではありません。

まずは、今回の工事での立場を確認
  • 元請が自ら運ぶ:自社の産業廃棄物の自己運搬なら、収集運搬業許可は原則不要です。
  • 下請が委託を受けて運ぶ:原則として収集運搬業許可、委託契約、マニフェストが必要です。
  • 一次下請が許可なく運べる特例もありますが、金額だけでなく、工事の種類や運搬先など、すべての条件を確認します。
目次

現場の場面別・許可の早見表

今回の場面基本的な考え方
元請として受注した工事の廃材を、自社で運ぶ自己運搬なら許可は原則不要。車両表示・携帯書面などは必要です。
下請で作業した現場の廃材を、自社で運ぶ通常は元請の産業廃棄物です。自社の車でも、原則として許可が必要です。
小規模な修繕工事の一次下請として運ぶ特例の対象となる可能性があります。500万円以下・少量という条件だけでは決められません。
解体・新築・増築工事そのものの廃材を下請が運ぶ維持修繕工事の少量運搬特例の対象ではありません。原則どおり許可を確認します。

この表は産業廃棄物の収集運搬についての一般的な整理です。家庭の残置物など、建設工事で発生したものではないごみは分けて確認します。

建設廃棄物の排出事業者は誰になる?

排出事業者は原則として元請業者

建設工事に伴って生じる廃棄物については、発注者から直接工事を請け負った会社(元請業者)が排出事業者となります。

重要なのは、次の点です。

  • 解体・撤去作業を下請業者が行っても、排出事業者は元請業者
  • 「実際に廃材を出した下請が排出事業者」という考え方は誤り
  • 元請・下請間の契約で、排出事業者を下請へ変更することはできない

この整理は、建設廃棄物の処理責任を元請業者へ一元化するために設けられたものです。したがって元請業者には、廃棄物の処理方法、委託先の選定、そして最終的な処理状況までを管理する責任があります。

契約に「下請が処理する」と書いても、元請の排出事業者としての責任が下請へ移るわけではありません。一方、必要な許可を持つ下請へ、元請が適切な契約を結んで運搬などを委託することはできます。

分離発注の場合は誰が排出事業者になる?

発注者が建築工事・設備工事などを別々の会社へ直接発注するケース(分離発注)では、扱いが変わります。

この場合、各社がそれぞれ直接受注した工事範囲について、元請業者=排出事業者になります。

注意点は、廃棄物が混ざると責任区分が不明確になることです。分離発注の現場では、工事ごとの分別管理が特に重要になります。「どの工事から出た廃棄物か」が説明できる状態を保ってください。

元請業者が自ら廃棄物を運ぶ場合

元請による自己運搬は許可が原則不要

排出事業者である元請業者が、自社の管理下で自ら運ぶ場合、産業廃棄物収集運搬業許可は不要です。

確認したいのは、実際に誰が運搬するかです。

「元請だから不要」ではなく、「排出事業者による自己運搬だから不要」です。

したがって、次のような形態は自己運搬とは限りません。

  • 別会社や個人事業主へ、車両と運転手をまとめて依頼する
  • 運搬の管理・指揮を外部へ任せている

名目上は自社運搬でも、実態が運搬委託であれば、相手方に収集運搬業許可が必要になります。

許可が不要でも守るべき運搬ルール

自己運搬でも、運搬基準は適用されます。

  • 車両の両側面に「産業廃棄物収集運搬車」と事業者名を表示する
  • 廃棄物の種類・数量、積載日、積載場所、運搬先などを記載した書面を携帯する
  • 荷台をシートで覆うなど、飛散・流出・落下を防止する
  • 建設汚泥などは性状に適した車両を使用する
  • 車体やタイヤに廃棄物を付着させたまま走行しない
  • 過積載をしない

現場から自社の事務所や置場へ公道を使って持ち帰る場合も、車両表示や書面の携帯が必要です。

処分だけを委託する場合の注意点

「運搬は自社で行い、処分は業者へ任せる」場合は、次を確認します。

  • 元請が処分業者と、書面による処分委託契約を締結する
  • 元請が、紙マニフェストは廃棄物の引渡し時に交付し、電子マニフェストは法定期限内に登録する
  • 自社運搬だからマニフェストも不要、にはなりません
  • 自社置場へ持ち帰る場合は、保管基準を確認する
  • 建設工事由来の産業廃棄物を現場外で自ら保管し、保管場所が300㎡以上の場合は原則として事前届出が必要(許可施設などの除外あり)
  • 自治体条例で、さらに厳しい届出制度が設けられている場合がある

置場を新たに借りる予定がある場合は、契約前に面積と届出要否を確認しておくと安全です。

下請業者が建設廃棄物を運ぶ場合

下請による運搬は許可が必要なのが原則

下請として運ぶ場合は、自社の車であっても次の確認が必要です。

  • 下請が自分の作業で発生させた廃材でも、通常は元請の産業廃棄物です
  • 下請所有のトラックで運んでも「下請の自己運搬」にはなりません
  • 下請が運搬を受託する場合は、産業廃棄物収集運搬業許可が必要です

さらに、契約面でも注意が必要です。

工事請負契約に「廃材を搬出する」と書くだけでは、産業廃棄物の運搬委託に必要な事項がそろっているとは限りません。

必要になるのは次の2つです。

  • 元請と下請の間で、書面による収集運搬委託契約を締結する
  • 元請がマニフェストを交付し、下請を運搬受託者として記載する

元請と下請の間で、廃棄物処理法の法定事項を満たす書面契約を整える必要があります。契約書の名称だけではなく、委託する品目・区域・料金などの必要事項や、許可証の写しなどの添付書類を確認します。

下請の許可内容で確認する項目

下請業者が許可を持っていても、その許可で運べるとは限りません。元請として確認すべき項目は次のとおりです。

  • 許可の有効期限
  • がれき類、木くず、廃プラスチック類、金属くずなどの許可品目
  • 建設系混合廃棄物を構成する全品目が含まれているか
  • 積込み地・荷下ろし地を管轄する都道府県等の許可か
  • 「積替え・保管あり」「積替え・保管なし」の区分
  • 石綿含有産業廃棄物を取り扱える許可か
  • 廃石綿等の場合は、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可があるか

とくに見落とされやすいのが、混合廃棄物の構成品目です。「がれき類の許可があるから大丈夫」と思っても、実際には木くずや廃プラスチック類が混ざっていることが多く、そこに許可がなければ違法運搬になります。

排出事業者責任は元請にあります。下請の許可証を受け取って、品目・区域・期限を自分の目で確認する——この習慣が元請を守ります。

一次下請が許可なく運べる特例とは?

例外として、一定の条件をすべて満たす場合に限り、一次下請業者が許可なく運搬できる制度(少量運搬特例)があります。条件は厳しく設定されています。

対象となる工事の条件

  • 元請と直接契約した一次下請が自ら運搬する場合に限られる
  • 二次下請・孫請はこの特例を利用できない
  • 元請と一次下請の書面による工事請負契約に、一次下請が運搬する旨を定めている
  • 対象工事が、解体・新築・増築を除く維持修繕工事で元請負代金500万円以下であること。または、引渡し後の瑕疵補修工事で請負代金相当額500万円以下であること
  • 特別管理廃棄物は対象外

ここで押さえるべき注意点が2つあります。

  • 500万円は、発注者から元請への元請負代金です。下請代金ではありません
  • 500万円以下にする目的で契約を分割しても、原則として合算されます

解体・新築・増築の工事そのものは、維持修繕工事の枠には含まれません。引渡し後の瑕疵補修は別の要件で確認するため、工事名だけで一括して判断しないようにしましょう。

運搬量・運搬先などの条件

  • 1回の運搬量が1立方メートル以下であること
  • 測定や容器によって、1立方メートル以下と客観的に確認できること
  • 現場と同じ都道府県または隣接都道府県内へ運ぶこと
  • 元請が所有権または使用権原を持つ施設へ運ぶこと(元請が処分委託契約を結んだ処理施設も対象になり得ます)
  • 運搬途中で保管しないこと
  • 一次下請自身が運び、別会社や二次下請へ再委託しないこと

1㎥以下であることを、容器の容量などで客観的に確認できるようにします。少量というだけでは特例を利用できません。

特例利用時に必要な書類・マニフェスト

必要になる書類は次のとおりです。

  • 請負契約書、注文書、個別工事用の別紙など
  • 記載事項——現場所在地、廃棄物の種類・量、運搬先、運搬期間、運転者、車両番号
  • 事業者としての車両表示と自己運搬用書面
  • 特例に該当することを証明する書面

そしてマニフェストの扱いが独特です。

  • 特例は「運搬だけ」の例外であり、処分契約は元請が行います
  • マニフェストも元請が交付します
  • 特例の一次下請が運ぶ区間については、運搬受託者欄・運搬の受託欄に下請名を記載せず、空欄または斜線とします

特例で運ぶ一次下請は、マニフェストの運搬受託者として記載しません。この取扱いは、特例に当たる運搬の部分についてのものです。その後に別の許可業者へ運搬を委託する場合の欄まで空欄にする、という意味ではありません。下請が元請に代わって交付事務を担当した場合は、交付担当者の欄に担当者の氏名を記載します。

建設現場で特に間違えやすい廃棄物

建設現場で発生する廃棄物には、区分の判断が難しいものが多くあります。

区分例と注意点
主要な産業廃棄物がれき類/木くず/金属くず/廃プラスチック類/ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず
性状に注意が必要建設汚泥(性状に適した車両・容器が必要)
品目の判断に注意石膏ボード(構成材によって扱いが分かれる)
石綿関係石綿含有産業廃棄物(普通産廃)と廃石綿等(特別管理産業廃棄物)は別物
一般廃棄物現場事務所の弁当ごみなど(事業系一般廃棄物。産廃許可では運べません)

とくに混合廃棄物は要注意です。見た目は「がれき」でも、実際には木くず・廃プラスチック類・金属くずが混ざっています。許可品目の漏れが起きやすいのはここです。

解体前からあった残置物は建設廃棄物とは限らない

解体・リフォーム前から建物内に残されていた家具、家電、生活用品——これらは建設工事に伴って生じた廃棄物ではありません。

  • 原則として、所有者・占有者が工事前に処理するものです
  • 家庭の残置物は一般廃棄物であり、産業廃棄物収集運搬業許可だけでは運べません
  • 事務所の残置物は、種類・材質によって産業廃棄物または事業系一般廃棄物になります
  • 建物に固定され、工事によって取り外す設備等は、建設廃棄物になり得るため個別判断が必要です

実務では、「解体前に施主に片付けてもらう」ことを契約段階で明確にしておくのが最も確実です。残置物のまま着工すると、区分の異なる廃棄物を抱えることになり、処理ルートが一気に複雑になります。

現場から自社の置場へ持ち帰りたいとき

置場へ持ち帰れるかは、誰の廃棄物を、どの立場で運び、どこに保管するかで変わります。

運搬の形置場で確認すること
元請が自己運搬する保管基準と、現場外保管の届出・自治体の制度を確認します。
許可を持つ下請が運ぶ他社の廃棄物を積替え保管する場合は、積替え保管を含む許可の範囲と場所を確認します。
一次下請の特例で運ぶ定めた運搬先へ直接運び、途中で保管しないことが必要です。運搬先には元請の所有権・使用権原などが求められます。

下請が所有する施設でも、元請が適切に借りて使用する施設などは、特例の運搬先になり得ます。「下請名義だから一律に不可」ではありませんが、途中保管をしないことを含め、すべての要件を満たす必要があります。実際のルートと契約を管轄自治体へ確認してください。

元請が運搬前に確認したいチェックリスト

  1. 誰が発注者から直接工事を受注しているか
  2. 工事に伴って発生した廃棄物か、工事前からの残置物か
  3. 元請の自己運搬か、他社への運搬委託か
  4. 下請が運ぶ場合、許可または特例の要件を満たすか
  5. 許可の品目・地域・期限に問題がないか
  6. 積替え・保管の有無を確認したか
  7. 石綿含有物や特別管理産業廃棄物がないか
  8. 元請が運搬業者・処分業者と直接契約したか
  9. マニフェストを準備したか
  10. 車両表示・携行書面・飛散防止措置が整っているか

元請・下請の運搬で、よくあるご質問

下請が解体作業をした場合、排出事業者は誰ですか?

原則として、発注者から直接工事を請け負った元請業者が排出事業者になります。実際に作業をした下請業者ではありません。契約でこれを変更することもできません。

元請が自社トラックで運ぶ場合、許可は必要ですか?

排出事業者である元請が自ら運ぶ場合、収集運搬業許可は原則として不要です。車両表示、書面の携帯、飛散・流出防止などは必要です。処分を業者へ任せる場合は、原則として処分委託契約とマニフェストも必要です。

下請が許可を持っていれば自由に運べますか?

許可の範囲内でのみ運べます。許可品目、積込み地・荷下ろし地を管轄する自治体の許可か、有効期限、積替え保管の有無を確認してください。とくに建設系混合廃棄物は構成する全品目が許可に含まれている必要があります。また元請との書面による収集運搬委託契約とマニフェストの交付も必要です。

500万円以下の工事なら、下請は無許可で運べますか?

金額は条件のひとつにすぎません。工事の種類、運搬量、運搬先、書面の携帯など、複数の条件をすべて満たす必要があります。また500万円は下請代金ではなく、発注者から元請への元請負代金です。分割契約をしても原則として合算されます。

500万円以下の解体工事も特例の対象ですか?

解体工事そのものは、金額が500万円以下でも維持修繕工事の特例枠には含まれません。一定の維持修繕工事と、引渡し後の瑕疵補修工事にはそれぞれ要件があるため、工事内容とほかの全条件を確認します。

二次下請や孫請も特例を利用できますか?

できません。この特例を利用できるのは、元請と直接契約した一次下請業者が自ら運搬する場合に限られます。別会社や二次下請へ再委託することもできません。

下請の置場へ一時的に持ち帰れますか?

許可を持つ下請が他社の廃棄物を積替え保管するなら、その保管を含む許可が必要です。一次下請の特例では、定めた運搬先へ直接運び、途中で保管しないことが条件です。下請所有の施設でも元請が借りるなどして使用権原を持つ場合は対象になり得るため、名義だけでなく契約と運搬経路を確認します。

特例の場合、誰がマニフェストを交付しますか?

元請が交付します。特例で運ぶ一次下請は、その区間の運搬受託者欄・運搬の受託欄には記載せず、空欄または斜線とします。後続の許可業者への運搬委託分まで空欄にする意味ではありません。下請が交付事務を担当する場合は、交付担当者の氏名を記載します。

現場に残された家具や家電も建設廃棄物ですか?

解体・リフォーム前から残されていた家具・家電・生活用品は、原則として建設工事に伴って生じた廃棄物ではありません。所有者・占有者が工事前に処理するものです。家庭の残置物は一般廃棄物にあたり、産業廃棄物収集運搬業許可だけでは運べません。

現場に合わせて、必要な手続を整理します

「下請として入る現場が増えた」「廃材を自社の置場へ持ち帰りたい」「許可を取るべきか迷っている」。そんなときは、予定している運び方をお聞かせください。

ご相談前に分かる範囲で大丈夫です
  • 今回の工事では元請か、下請か
  • 現場のある都道府県と、運ぶ廃棄物の種類
  • 運搬先・自社の置場での保管の有無
  • 運搬を始めたい時期

基本的にお忙しい会社のお邪魔をしないよう、必要最小限のご連絡でお手続きを進めています。必要な許可の確認から申請準備まで、お手伝いします。

自己運搬や講習会も確認したい方へ

執筆者・確認日・公的な確認先

執筆・確認:岡田百花(行政書士)
確認日:2026年10月8日

全国共通の制度を中心に整理しています。自治体独自の届出や運用は地域によって異なるため、実際に運搬する前に管轄自治体の最新案内もご確認ください。

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